第3章 日向順平
アジアン雑貨を取り扱う店内には、お香の独特な香りが漂っていた。
客も疎らでレジに立つドレットヘアの店員は携帯をいじっている。
「あー、あった♪ これが欲しかったんだ~♪」
「ん? ……これ……?」
千穂が嬉しそうに手に持つそれは、不気味なお面を持って、不気味な笑みのおっさんが仁王立ちしている人形だった。
「お前……こんなんどこで見つけるんだよ?」
「え? ネットで見たんだ~、えっとね~……あ、これこれ!」
そう言って千穂が見せたサイトには「幸せを呼ぶ幸運の守り神 サチオさん」と書かれていた。
サイズの割にリーズナブルな価格だが……これが本当に幸運の守り神なのかは信じがたい。
「日向君も買う? 女の子も居るんだよ♪」
千穂はサチオさんの隣に居るおばさんの人形を渡してきた。
「こっちはサチコさん?」
「え! 日向君てエスパー? なんでわかったの!??」
「いや、うん……まぁ、多分だいたいわかると思うよ?」
「え~、私わからなかったよ~? なんでなんで~??」
千穂が何度も尋ねてくるので俺は適当にあしらい、結局二人でサチオさんとサチコさんを買う事になった。