第3章 ノエルという少女
『どういうこと?』
「だから····」
ルーカスが答えようとしたその時、リヴァイ兵長が話に割って入る。
というか、リヴァイ兵長がいたことに気づかなかった。
「ルーカス····だったか」
「はい」
「今、こいつはこの調査兵団の中で必要な人材だ」
リヴァイ兵長がいつもよりも鋭い目付きでルーカスに言った。
嬉しかった。
例え、今言ったことが嘘だったとしても、わたしは単純に嬉しかった。
こんなわたしでも役に立ててるんだ。
そう思えたから。
だが、それに負けじとルーカスも言い返す。
「だから、諦めろと?ノエルは姉の大事な忘れ形見です。そんな大事な子を危険なところへ預けられません」
『ルーカス·····』
ルーカスがわたしを見て、微笑む。
わたしを必要としてくれた。
大切だと言ってくれた。
だとしても、わたしにはしなければならないことがある。
だから·····
『ルーカス、ごめんなさい。わたしは辞めない。わたしにはまだ、成すべきことが残っている』
「······そうか。ノエル。お前は昔から頑固なところがあったからな。はは、本当に姉さんそっくりだ」
そう言ってルーカスがわたしに手を差し出す。
「約束してくれ。必ず、無事で会いに来ると」
差し出された手。
わたしはそれを握り返すことが出来なかった。
だから、大丈夫、と笑って誤魔化した。