第3章 大きな朽ちた木の下で
「そういえば、貴方の名前、聞いていませんでしたね」
鬼灯様が少し速度を落とした先に見えてきたのは、
赤くて大きな建物。
あれが閻魔庁だろうか?
閻魔庁までの間、鬼灯様は私をおぶったまま、
ざっくりと今の私の状況を説明してくれた。
今いるここは地獄で、私は本来まだ死んでいない事。
でも、何かの手違いでここに来てしまった事。
それを解明するため、データベースである閻魔庁へ行く事。
信じられない物を見聞きした後の私はそれらをすんなり受け入れることができた。
落ち着きを取り戻せた私は答える。
「あ、そうでした。私の名は・・
「そうだ、待ってください」
鬼灯様が途中で遮る。
「よく考えたら名前の名乗るのはあまり良くないです。
古来から、名前を知られるというのは相手に支配をされる、という意味があります。生者のあなたにとってリスクがありすぎる。
どうでしょう、仮の名前を作っておきませんか」