第12章 エピローグ
「・・・随分待ちましたよ槐さん」
ちょっとは期待していたけど、お迎えに来てくれるなんて。
「いい人生だったんじゃない?お疲れ様」
白澤様も一緒だ。
そして、二人の間に小さな小さな影。
まるで二つの補色を中和するかのように
あの時助けた灰色の子猫がいた
「キミもお迎えにきてくれたんだね」
「文句なしで天国行でしょうね、槐さん」
「本当ですか?良かった。頑張った甲斐がありました。」
「そりゃあ地獄には落ちたくないでしょうね」
「私、お二人の役に立ちたくて、漢方や薬、その他にも沢山学びました。どうか、私をまたお傍に置いて下さい!」
「槐さん・・・貴方それで現世であんなに勉強を・・・」
「あ、でも槐ちゃんは天国行だから、また僕と一緒に暮らせるよ~」
「絶対駄目です!私の伴侶に手出しはさせませんよこの淫獣」
「同意の上なら僕は人妻だっていつでもオッケーだもーん」
「不貞は許しませんよ、あと私は亭主関白です」
「・・・覚悟します!」
「こいつが嫌になったらいつでも鞍替えしてね~」
ぎゃあぎゃあと言い合う二人の間で、子猫が小さく鳴いた
「そうでしたね。そろそろいきましょう」
一足先に空を駆け出す子猫
2人に両腕を優しく引かれ、私は天へ上る
地上が離れていくにつれ、どんどん体が軽くなる
「槐ちゃん、今ねキミ、あの時の姿に戻ってる」
白澤様に言われ手元を見ると、
皺だらけで節くれだった私の手は
白く張りがある少女の頃のそれに立ち戻っていた
「ヒトは死んだあと、人生で一番思い入れのある時の姿に戻るといいます。槐さん、・・・想ってくれてありがとうございます」
見つめ合う鬼灯様と私
私の手を引く二人の背後から、いつか見た様な満月が照らす
足元には私を見送るかのような、夜の街明かりがいつまでも輝いていた。
‐fin-