第11章 それぞれ還る道
どれくらいそうしていただろうか
自分の感覚か鬼灯様の感覚かすらわからなくなるくらいに
抱きしめ合っていたのに
その時は呆気なくやってきた
「槐さん・・・もう、時間です」
天国と地獄をつなぐ門まで案内され、
そのどちらでもない、奥まった門へ促される
「さ、ここが現世に繋がる門です。ここを出たら本当にお別れです」
門が開かれ、その先から強い光が溢れている
「鬼灯様、生きる力をくれてありがとう。大好きです。この世でもあの世でも一番大好きです。きっと忘れません」
「私も貴方の事を忘れません。お慕い申しております」
最後にもう一度抱き合い、口付ける。
きっと今目を開けたら名残惜しくなる
鬼灯様から離れ、
私は門に飛び込んだ。
まだ唇にぬくもりがあるうちに。
貴方の事を忘れないように。
―遠くから、なにか、きこえる
「患・・の容態・・・戻・・拍・・脈は・・・です」