• テキストサイズ

【鬼灯の冷徹】ダイアード災厄

第11章 それぞれ還る道


月に照らされた桃園の中に、その影は佇んでいた。



息を弾ませ駆け寄る



大好きなあの人の名前を呼びながら。


「鬼灯様!」


「槐さん。待ってましたよ。あぁ、やっぱり貴方はその服の方が似合っている」





沈黙





残された時間はあまり無いはず。

なのに

何を話して良いのか判らない。


「槐さんと最初に会った時も、木の下でしたよね」
ぎゅっと引き寄せたその腕は、心なしか震えているように見えた


桃の花が舞う


「・・・離れたくないなんて我儘、言いません。・・・でもやっぱ、悲しいですね」


笑って言うつもりが、涙声になっている。
そんな私を鬼灯様は抱きしめてくれた。


唇同士が触れるくらいの優しいキスが何度も繰り返される


「悲しいのは私も同じです。できればこのまま貴方と一緒に何処かへ逃げることが出来るなら、どんなに良いでしょうか」



鬼灯様の黒い瞳が悲しげな色を帯びていた



「貴方くらいです。私にこんな表情をさせるなんて。そして貴方以外にいないでしょうね」


もう一度強く抱きしめられる

鬼灯様の鼓動が少し、速い




「もう少しだけ時間があります。槐さん、それまでこうしていて良いでしょうか」


抱きしめ合ったまま私は頷く


本当に、時が止まってしまえばいいのに
/ 82ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp