第10章 神獣戯画
油断してた。
思えば家を出るとき、何の気配もしないのはそういう事だったんだ。
浮かれていた私には気づけなかった。
「あーーーーッ!!!」
閻魔殿をこっそり抜け、門の所までさしかかろうという時、
ばったり会ってしまった。
多分今一番何となく顔を合わせられない人に。
白澤様の大声と同時に鼻血が噴出した。
「おや白澤さん、こんな夜更けに奇遇ですね。また花街で遊んでたんですか」
「おっお前・・・槐ちゃんと何してたんだよ!?」
「ナニって・・・ねぇ?」
意味ありげな視線を送られ、私は目を泳がせる他なかった
「!?!?!?まさか・・・ちょ、マジで!?」
「夜中ですから静かにして頂けませんか」
「や、ややちょちょ待って、ちょと待って。・・・槐ちゃん、コイツとその・・・あの・・・」
「女性にそんな事聞くのは下世話ですよ。察してください。」
「是如何事!!!」
がっくりうなだれる白澤様
どうしよう。この人もしかして私の事ちょっと好きだった、とか・・・?
と思いきやガバッと顔を上げ
「一回かそこらヤッたからって僕は諦めないよ!?首洗って待ってろコノヤロー!
槐ちゃん、帰ろう!そんで僕が上書き保存してあげるよ!」
「おいまて白豚。もし槐さんに手を出したら挽肉じゃすみませんよ」
「知るかバーカ!精々寝取られろ!」
「いやいや、私は鬼灯様が好きですから!」
「あんな朴念仁より僕の方がよっぽどいいんだから」
「でもコイツ浮気性ですよ」
「誠心誠意の女遊びは浮気とは言わないの!」
「万年発情期白豚。明日早くから槐さんを連れての地獄巡りがあるんでさっさと連れて帰って寝ろ」
「じゃ僕も行こうかな」
「このツアーは2人乗りだから貴方は駄目です」
「おま・・・スネちゃまかよ」
いつの間にか
本気になりかけていた喧嘩が痴話喧嘩になっている。
やっぱりなんだかんだこの二人は似ている。