第9章 地獄篇 R18
今、こんなにときめいているのに、こんなに満ち足りているのに
数日後には独りきりが待っている。
想いがこみ上げて涙が溢れてきた。
「っ・・・嫌でしたか?」
急に泣き出した私に狼狽する鬼灯様
「ちが・・・違うんです、私、鬼灯様の事大好きで、でもすぐ別れが来ちゃうんだなって、今こんなに幸せなのにもうすぐ独りになっちゃうんだなって、それで・・・それで・・・」
一度零れた涙はどんどん溢れて来る。
「大丈夫。貴方は独りきりじゃない。だから、もう泣かないで下さい」
溢れた涙を口付けで拭ってくれる鬼灯様。
あ・・・ここに来たときと一緒だ・・・
胸板で覆うように大きく抱きしめてくれた
伝わる暖かな鼓動は私の悲しみを溶かしてくれる
「笑ってください、私の為にも」
「・・・ぐす・・・じゃあ鬼灯様も笑ってくださいよ」
「私は面白いと思った時には素直に笑いますよ」
「見てみたいです」
「いつか見られるといいですね」
浴室を借り、シャワーで体を流す。
まただ。また来た時と同じ。
でも全然違う意味のドキドキ
時が止まっちゃえばいいのに
そしたら例え全部の問題が宙ぶらりんでも、
きっと幸せなのにな
浴室から出てきた私の身体をタオルで丁寧に拭いてくれる。
「さ、湯冷めしないようにちゃんと拭くんですよ」
あ、まただ。鬼灯様またお母さんみたいになってる
「正直惜しいですが、薬の事もあります。・・・門まで送りますよ」
心底名残惜しいといった風に、鬼灯様が呟き、帰る支度をする
廊下に出る寸前、ぎゅっと大きく抱きしめられて、
唇が触れあうだけの、優しいおやすみのキス。