第8章 実録、あの世ライフ
覚えていませんか?灰色の子猫の事。
あれは数か月前の話
私が現世視察で長期滞在していた時の事です。
派遣先の仕事の帰りでした。夕方近くでした
程よく錆びれた商店街のシャッター下あたりで
ヒトにいじめられる子猫を見かけたんです
生まれつき弱っていたのか、それとも手折られたのか
よろよろと逃げようとする子猫の手足や尾をひっぱって
傘の先で突いている、高校生くらいでしょうか?
思春期の子供たち。何人かいましたね。
基本、現世での出来事には干渉しない私ですが気分は良くありませんでした。
止めようと思った矢先に、そこへ文字通り貴方が突っ込んできました。
子猫の尻尾を掴んだ一人を体当たりで体制を崩し
脇にあった傘を取り振り回す。
咄嗟に取った行動にしても、正直笑えました
「止めろ」と一言言えば解決するかもしれないのに。
相手は学生と言えども、大人程の力を持つ彼らに掛かって行くのは勇気を要したでしょうね。
自分に向けられた暴力にビビり、彼らがおとなしく散って行かなければ私は貴方を助けていたかもしれません。
そして、傘に記名してあった苗字を頼りに近くの学校へ抗議の電話をする貴方にも正直笑えました。
あぁ、そこは冷静にやるんだな、と。
あの後貴方が手当てをし、病院へ連れて行った子猫は残念ながら死んでしまいましたが
貴方は子猫にお墓まで作り、供養し最後まで面倒を看ましたね。
地獄の亡者も最後まで責任をもって拷問しなければ、
と、私も身につまされました。