第8章 実録、あの世ライフ
「単純に魂が肉体に帰りたい!って強く思えば帰れるんじゃないの?健全な肉体には健全な魂が宿る、って言葉の逆みたいなさ。だいたい死んでるなら地獄の奪魂鬼達が動くんじゃないの」
「それは判ります。でも具体的には何をすれば良いと思いますか?」
「うーん・・・楽しい、生きたいって思う経験とか?」
「私の魂がここにある以上、現世の経験、どうやって積めばいいんでしょう?」
「あ」
「あ」
鬼神と神獣が同時に膝を打つ
「あの世で楽しい事をしよう」
わくわくするような提案の反面、心に引っかかっていた疑問を口に出す
「・・・あの、もし、もしですよ」
言いずらくて言葉が出てこない
「なんですか?」
「もし私が自分を諦めた場合、どうなるんでしょう?」
「それは、生きることをという事ですか?」
俯いたまま頷いた。
もしここで楽しい経験を積んでも、現世に戻れば私は独りきりの身。
そこから生きる術を模索するなんて、きっと辛い。
「槐さん!」
厳しさを含んだ大きな声に体がびくっとなる
「・・・生きたくないなんて、言わないでください。
あの世には、生きたくとも死しか選べなかった者が沢山います。経緯は違えど皆死まで精いっぱい生きた者達です。
その者達のためにも、貴方自身のためにも、もうそんな悲しい事を考えないでください」
「・・・ごめんなさい」
「あと因みに自殺は罪に当たりますので、必ず地獄に落ちます。その際には私自ら全力で貴方を痛めつけます」