第6章 錆びた扉の桃源郷 ※R15くらい
「かなり強くやられたんだね、まだ跡が残ってるよ」
白澤様が眉を顰める。
「ホントに、もうちょっと僕が早く助けてあげられたらこんな跡も残らなかったのにね・・・」
華奢な指がそっと私の肌に触れる。
「首筋にもついちゃって・・・かわいそうに」
そういいながらゆっくりと袖をまくり上げ、私の右半身は下着姿に近い。
「・・・こんな跡、いっそ僕が上書きしてしまいたいくらいだよ」
白澤様が首筋の跡に自分の唇を押し付けて呟いた。
サラサラの黒髪で表情は見えない。
そのままぎゅっと胴を抱きしめられる。
「白澤様・・・」
「・・・っ!ごめん、僕、そんなつもりじゃ・・・どうしてだろう、僕にもわかんない。こういう事されて君が傷ついたの判ってるのに・・・」
狼狽した白澤様を宥める言葉が見つからない。
目を合わせないまま私にもう一度小さく謝り、そのまま寝室へ行こうと背を向けた。
「あの・・・!白澤様・・・その、私、気にしてないです。・・・嫌じゃ、ないです。ただびっくりしただけ。」
「不行!だめ!僕今君とそんな話、できないよ」
「・・・わかりました。白澤様、じゃあ一つお願いがあります。明日の朝起きたら、今日の昼間みたいな、優しい白澤様で居てください。そして、いっしょに朝ご飯を食べましょう」
「明白了、おやすみ槐ちゃん」
魂の抜けたようにふらふらした足取りで寝室へ行ってしまった白澤様。
どうしてこの事で彼自身が狼狽しているのかは判らないけど私も寝よう。
色々ありすぎて頭がぐるぐるだ。
どうか、考えすぎる前に眠れますように。