第2章 最悪な目覚め
「まるで、地獄・・・」
「そう、地獄だよ。何言ってるんだお前?」
驚いて顔をあげると、そこには異形のモノがいた。
ヒトと同じような見た目ではあるが、
毛深く大きな体、大きく見開いた目、
そして、頭に大きな角が二本。
肩には何か汚い布袋を担ぎ、もう片方の手には・・・棍棒。
虎の腰巻はしていないものの、本で読んだ鬼の風体そのものだ。
「おまえ、変な亡者だな。白装束はどうした?」
そういいながら鬼は担いでいたものをどさりと降ろした。
「っ・・・!ぁあ・・・!」
声にならない悲鳴が声帯を通過する。
鬼が持っていた布袋か何かだと思っていたそれは、
ヒトだった。
泥や血や汚物でまみれているが、微かに息はしているようだ。
「ぁ・・・・助け・・・ぅぁ・・・」
か細い声で助けを求められる。
鬼がその声を遮るように大きな声で言い放つ
「逃げてもムダだ!これがお前の罪だ!」
言うが否や、持っていた金棒を亡者めがけて降り下ろす。
大量の血しぶきが当たりに飛び散る。
近くにいた私は殆ど直にそれを浴びてしまった。
生ぬるい感覚が額から頬に流れていく。