第5章 花蟷螂 ※一応R指定
手を引かれ、建物の中へ近づいてゆく。
建物の周囲をそっと見渡してみたけど、崖しか見えない。
ここで変に逃げ出したら、余計に危険かもしれない。
それに・・・この人の、獲物を捕まえたかのような目には、抗えない。
「さぁ、こちらです。お入りください。」
通された廊下をそっと歩く。
男はさりげなく私の後ろに付く。私が逃げぬようにする為だろうか。
やがてついた応接間のソファに腰掛けるよう促された。
男の身なりに違わず、絢爛な調度品の数々。
そこには彼の美意識の高さが伺える。
「ふふ、綺麗でしょう?」
傍にあった茶器でお茶を入れながらぐるりと見回す私に笑みを向ける。
「突然あのような真似をして申し訳ありません。恐かったですか?さぁ、さぞお疲れでしょう。まずはこのお茶でもお召し上がりください。」
目の前に出された美しい茶器。
心の底から労ってくれるような彼の仕草に安堵し、私はお茶に口を付けた。