第5章 花蟷螂 ※一応R指定
煙は私を取り巻いたまま、物凄いスピードで飛んでゆく。
恐くて目を開けていられない。
どれくらい経っただろうか。
速度が急に落ちたかと思うと、一つの建物が見えてきた。
それはどこか、中華的な雰囲気を纏った、崖に立つひっそりとした建物だった。
「さぁつきましたよ。お姫様。」
イントネーションがややぎこちない様子のその声と共に、
煙の色は薄くなってゆく。
地面に足が付いた。
同時に、煙は私の目の前でヒトの形を造り、本来の姿を現し始めた。
極彩色の中華衣装に身を包んだ、妖艶な男がそこに立っていた。
女性の柄のような漢服を纏い
艶やかな黒髪を結いつけ、絢爛な装飾品を施している。
一見すると男装の麗人に見えるが、
その高い身長とがっしりとした肩幅が男性である事を裏付けていた。