第2章 勧誘
錆びついた廃ビルの最上階、開け放たれた扉の奥、鈍色の街を背負って立つ男。暁のリーダーはアオイの想像より遥かに若かった。
「その小娘がお前が推薦する新メンバーなのか?」
唐突に話が始まる辺り、飛段の言っていたリーダーへ筒抜けというのは間違いではないのだろう。
「ああそうだ。雷の国の雇われ技術者らしいが、コイツの戦闘力……」
使用した言葉が適切ではなかった事に気づき、角都は言い直す。
「…コイツの保持する戦闘力は、最早一般人のものではない」
「ほう、お前がそこまで言うとはな。しかしチャクラの量も一般人とさして変わらないようだが……この小娘に何ができるというのだ」
眉一つ動かさず暁のリーダーは言う。
「死体から忍術を解析し、そして……」
角都は先日の戦いで死体の首に付けられていた銀色の装置を取り出す。
大きさは掌に乗ってしまう程小さく、本体から太い針が8本伸びている。これは死体の首に刺さっていた部分で、乾いた血が付着していた。
「この装置を取り付けると……この女が僅かなチャクラを送るだけで、死体が傀儡のように動き出す」
「ちょっと待て角都!なんでテメェはこの女の能力知ってんだよ?」
飛段の発言はこの場では基本的にスルーされる。
「忍術と絡繰(カラクリ)の合わせ技と言う訳か。その死体の兵は一度に何体まで出せる?」
「……て、敵味方の区別無く、生きてる者に攻撃を加える程度の単純な動きなら…二百…いや二百五十は出せますね!」
最後に足された五十はアオイの張った見栄だったが、それは荒唐無稽な数字ではなかった。駆動時間や事前準備、素材となる死体の確保などを度外視して考えれば、必要なのは回路に呼び水のように僅かなチャクラを流してやる事だけなのだから。