第2章 勧誘
雨隠れで合流した三人は薄暗い路地を抜け、とある廃ビルに辿り着いた。
「予定より随分早い戻りだな。何があった」
入り口の前に立っていたピアス人間の何とも言えぬ威圧感に、アオイは自身が値踏みされる立ち場だと言う事を思い出した。背中にじんわりと嫌な汗が滲む。
「暁の新メンバーについて判断を仰ぎたい」
あの角都の改まったような態度に、まさかリーダー直々にお出迎えされたのかとアオイは身構えた。
「……入れ」
そう言われ中に通される。男は引き続き門の前に留まって見張りを続けるようだった。どうやらアオイの予想は外れたようだ。
「えっと、今のは……暁のメンバーでしょうか?」
「あァ?違ぇよ。クソリーダーの手駒だ。あ、あとアイツらに言ったことはクソリーダーに筒抜けだから気をつけろ」
つまらなさそうに耳垢をほじりながら飛段が答えた。
それはまるで実体験の様に。
薄暗い階段に三人の足音が響く。
「そういえば暁のリーダーってどんな人なんですか」
これから会うという犯罪集団の長について何一つ知らないという事をアオイはこのタイミングで思い出したのだが、それは余りにも遅過ぎた。
「…直ぐに解かる」
角都がいつも通りの低い声でそう呟く様に言うと同時に、ひび割れたコンクリートの階段は最上階で途切れた。