第2章 勧誘
同時刻、雲隠れの里。
一人の男が雷影の執務室に呼ばれていた。
「昨日、木の葉の里から出された手配書だ」
男は雷影が投げて寄越した人相書きを確認したほんの一瞬だけ動揺を見せたが、忍らしく感情の一切を押し殺して言った。
「追撃の任務ですか」
しかし雷影、エーは首を横に振る。
「既に追い忍を向かわせた。柳アオイ……いや、雲隠れの抜け忍"キュー"。奴は必ず雲隠れの手で始末する!」
叫んだ拍子に振り下ろされた拳が机を真っ二つに割る。
「では何故私は呼ばれたのですか?」
慣れた手付きで散らばった書類を拾い集め雷影に手渡す。
「忠告だ。……決して奴を助けてやろうなどと考えるな!それだけだ!」
太く力強い命令に、男は「ええ、わかっています」と静かに答えた。その声には一見見過ごしてしまいそうな程僅かな迷いが混じっていた。
「お前の能力は認めている。ただシー、お前の優しさは忍として命取りだ。いつか足元を掬われるぞ!」
「雷影様……」
執務室を出た後もシーの頭では雷影の言葉とかつての教え子の顔が代わる代わる巡っては彼を悩ませた。
「どうしてこんな事になってしまったんだ……アオイ」