第2章 勧誘
ようやく角都さんの黒いヒジキもとい地怨愚から解放された私は、雨隠れにあるという暁のアジトへ向かっていた。
どうやらそこでリーダーに会い、許しが出れば晴れて犯罪集団の仲間入りということらしい。
「なァ説明しろよ角都!もともとコイツは俺が殺すっつう話だっただろ?」
角都さんから暁への勧誘を受けたというのに、銀髪のタレ目、飛段さんはどういう訳か未だ執拗に私を狙っていた。
私はそのギラギラとした視線から隠れるように角都さんの後ろに逃げたが、すぐに「邪魔だ。離れて歩け」と首根っこを掴まれ引き剥がされた。
「百歩譲って生け捕りで換金だっただろ?一体何がどうなったら暁に引き入れるって話に変わっちまうンだよ、アァ?」
「話す必要は無い、貴様が寝ている間に話は済んだ。……大体こんなガキに簡単にやられるお前が悪い」
「ガキとは失礼ですね。こう見えても私十八です、つい最近までまっとうな職についてましたし立派な大人です」
「だからそれがガキだって言ってンだよ。こう見えて角都はなぁ……八十?ん、九十だったか?まあどうでもいいけどくたばり損ないのクソジジ…」
「黙れ飛段」
ガキン。重たい金属音。
私の目では捉えられない速さで角都さんの硬化された右手が飛んで、それを当たり前のように赤い大鎌が弾いた。
「っつうかテメェ、何当たり前みたいに会話に加わってんだよ!俺は認めねえからな!」
「小娘に返事をしたのはお前だろう。全く」
「……クソッ、何なんだよ」と足元の小石を蹴り飛ばして、それっきり飛段さんは静かになった。