第2章 勧誘
「…で、貴様は一体どうやって死体を操っていたんだ?」
「そんなのもちろん企業秘密で…痛い痛い痛いです!」
冗談で切り抜けられる程、暁は甘くは無い。観念して「わかりました、お話します!」と叫ぶとアオイを縛る黒い触手、地怨虞の締め付けは止んだ。
「俺は金にならない冗談を聞くつもりは無い。聞かれた事にだけ答えろ」
「…それは逆説的に、動く死体の話は金になる、と?」
虚勢を張って受け流す。たぶんこの男の気分次第で私は簡単に絞め殺されるだろう。まさに蛇に睨まれた蛙というところか。
「同じ事を言わせるな。…だが察しがいい奴は嫌いじゃない」
男がそう言うと締め付けは弱まり、圧迫から解放された肺に急いで酸素を取り込む。これは命懸けの交渉。私だって簡単に死にたくは無い。
今の状況から見ても、すぐに私を殺さないだけ利用価値は見出してくれているはず。
「あそこで伸びている俺のツレ、アイツは馬鹿で、煩くて、がめつくて、のろまでどうしようも無い奴だが……決して弱くは無い」
「……はぁ」
サラリと全力の貶しが入ったのはスルーの方向でいいのだろうか。
「結論から言う。暁に来い」
威圧的に角都と呼ばれた男は言った。
おそらく、拒否権は無いのだろう。