第22章 それは2人だけの秘密/コナン
「ううん、何でもないんだ。あ、コーヒー冷めちゃったね、淹れ直してこようか。」
腰を浮かしかけるが、コナンくんの言葉によってそれは叶わなかった。
「さくらさん、この際ですからお互いに隠し事は無しにしませんか?俺も全部話しますから。」
コーヒーはいいから座ってください、と真剣な表情で言われてしまえば、腰を下ろすほか無かった。
「さくらさんの予想通り、俺は工藤新一です。黒ずくめの組織の奴らにAPTX4869という毒薬を飲まされて、気が付いたら体が縮んでしまっていたんです。信じられないと思いますが…」
「待って、黒ずくめの組織って何?」
「奴らが上から下まで真っ黒な服を好んで着ているんで勝手にそう呼んでいるんです。もしかしたら他の呼び方もあるのかもしれないですが。」
コナンくんの飲まされたという毒薬、APTX4869。やはり使用者リストに載っていた工藤新一という名前は同姓同名の別人ではなかったということか。
どういうわけか彼はリスト上”死亡”となっていたが、それは担当者の確認漏れか何かなのだろう。
となると、追っているという黒ずくめの組織とはジンやベルモット、そして私も不可抗力ながら所属しているこの組織のことを指しているに違いない。
「その黒ずくめの組織の奴らってさ、」
「ちょっと待って下さい、次は俺が質問いいですか?さくらさんはさっき何を言いかけました?」
ジンとウォッカのことを聞こうとしたところで、私の言葉は彼のそれに遮られた。
確かに、私だけ質問していたのでは些か卑怯だ。
小さく息を吸って覚悟を決めると、口を開いた。
「今から話すことは誰にも言わないでね?勿論蘭ちゃんにも。ああ、警察も勘弁して。私、法律には詳しくないけど犯人隠匿とか幇助とか何かしらの罪に問われそうだから。」
こくりとコナンくんが頷いたのを確認して、先を続けた。
「私は、APTX4869って薬のことを知ってる。そして多分、コナンくんが探している”黒ずくめの組織”の一員だと思う。」