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[名探偵コナン]マティーニにお砂糖を

第3章 出会いは必然/ベルモット


(出会いは必然)

同僚の送別会の帰りだった。
みんなで騒がしく飲んだ後に1人のマンションに帰るのを想像したら無性に寂しくなってきて。
真っ直ぐ帰宅する気分になれずに、マンションの近くにある行きつけのバーに立ち寄った。

カウンターの端の席に座って煙草に火を点ける。
普段はほとんど吸わないのに、ここに来るとついライターに手が伸びてしまう。

「さくらちゃん久しぶり。いつもので良かったかな?」

ゆっくり紫煙を吐き出すと、目の前にコトリとグラスが置かれた。

「ありがとう。やっぱりマスターのモヒートが1番。」
「それは嬉しいねぇ。ゆっくりしてってよ。」

ありがとう、と笑うとマスターはカウンターの奥へと引っ込んだ。

ゆっくりと店内を見渡す。
平日の夜だからか、客はそれほど多く入っていないようだ。
カウンター席も私の逆端にカップルが1組飲んでいるだけだった。



「隣、いいかしら?」
不意に声をかけられて、思わず顔を上げた。
そこには綺麗な外人のお姉さんが微笑んでいた。

「日本語、お上手ですね…」

思わず口から出たこの台詞を誰が責められようか。絶世の美女と言っても過言でないような女性に突然話しかけられたら誰だってこのような反応をするはずだ。
彼女の唇が可笑しそうに歪む。

「貴女変わってるってよく言われない?」

くすりと笑いながら彼女はそう言った。




彼女とは実に様々な話をした。
私が病院の医師だと言えば、彼女は女優だと言う。残念ながら、私が芸能界に明るくないせいでピンとはこなかったのだが…
私が面白い患者のエピソードを話せば、彼女は撮影での監督のムチャ振りエピソードを。
最近ロンドンに旅行に行った話をすれば、彼女は住んでいたというNYの話をしてくれた。

「次は?何か飲む?」
話に夢中になりすぎて、彼女に促されるまで自分のグラスが空になっていることに気づかなかった。

「ちなみにそれは?」
次に何をオーダーしようか悩んで、彼女の手の中にあるグラスを指差した。

「これはマティーニ。辛口だけどオススメよ。」
「じゃあマスター、マティーニ下さい。」


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