第2章 再会は突然/ジン
「このマンションオートロックだし、セキュリティはかなりしっかりしてるはずなんですけど。」
目の前のテーブルには2つのワイングラスとチーズやナッツなどのおつまみが並んでいる。
ちなみに手土産ということなのだろうが、ジンも高そうなワインを持参していた。
「マンションのセキュリティなんざどうとでもなる」
「不法侵入の言質が取れましたが」
「フン、今更だな」
お互いに笑いながらグラスを傾ける。
ジンは一月前にここにいた時と何ら変わった様子はない。
「怪我、あれからよくなりました?」
「お陰様でな。もう問題ない」
「それは何よりです。それで、今日は何か私に用事があったんですか?」
気になっていたことをぶつけてみる。もう二度と会わないだろうと思っていたのに。まさかただ近くを通ったから、なんて理由ではないはずだ。
少しの沈黙。
カランとワインクーラーの氷が音を立てた。
「この小説の」
「…え?」
ことりとテーブルに1冊の本を乗せる。
それは昨日の仕事帰りに私が購入し、つい徹夜で読破したミステリー小説の最新刊だった。
「新刊が昨日発売だったと思ってな」
「まさかそれだけのために?」
「悪ィか?俺も続きが気になってたんでね」
クスリと笑いが漏れる。
本なんてその辺の書店にいくらでも置いているだろうに。
「もう最後まで読みました?」
「ああ」
「犯人、絶対兄だと思ってたのに完全に騙されましたよー」
「あのミスリードの誘い方は上手かったな」
「ですよね!」
きっとジンは私が前に言った言葉を覚えていてくれたんだと思う。
「本とか映画を見終わった後って、誰かと感想言い合いたくないですか?それが趣味合う人とだったら最高ですよね!」
緩む口元を隠すかのように、ワイングラスを傾けた。