第20章 (番外編)ハロウィン
でもここで挫けてはだめだ!私にはもう一つ、達成しなければならないミッションがあるのだ。そう、ジンがお菓子なんて持っていないことなど初めから想定済み。
静かに紙袋から悪魔の角を取り出し、振りかぶる。
あ、とウォッカが小さく呟く声が聞こえた。
「…っあはははは!似合う似合う!ゲームのラスボスに居そう!そのコートと見事にベストマッチ…!」
「テメェ何してやがる!何だこれは!」
ジンの帽子を取ってすかさず角をはめる。黒の皮のような素材で出来たそれはジンの銀髪の中で一際存在感を放っていた。
うん、間違いなくコナンくんより似合ってる。
コナンくんが小悪魔だとしたらさしずめジンは大魔王様だ。
ひと通り笑い倒して我に帰る。そこにはひどく慌てた様子のウォッカと見たこともないくらい不機嫌なジンがいた。
どういうつもりだ、とこちらを睨んでいる。
「兄貴、ハロウィンですよハロウィン。」
なんとか落ち着かせようとウォッカが声をかけてはいるが、ジンの耳には入っていない。
「そうだよハロウィン。だってジン、お菓子持ってないって言ったじゃない。だから悪戯。…怒らないで!」
ホールドアップよろしく両手を挙げると、ジンは溜息を吐いて頭の角を床に投げ捨てた。
「今回だけだぞ。次俺にこんなことをしたら命はないと思え。」
はーい、と素直に返事をするとなぜかウォッカがホッとしたように息を吐いた。
「兄貴にあんなことするなんて命知らずも良いとこですよ!」
「うんごめん、でも1枚くらい写真撮っておきたかったなー。」
「さくらさん!?」
その後、再びジンに睨まれて何度目かになる謝罪をすることになったのだが、写真を取らなかったことは未だに後悔している。