第2章 再会は突然/ジン
(再会は突然)
衝撃の出会いと別れから1ヶ月、それまでと変わらぬ日常を過ごしていた。
家と職場の往復以外に日々の楽しみといえば、好きな小説家の新刊発売だとか、お気に入りのお店でランチを食べるとか、そんなささやかなものばかりで。
今日は同僚からもらった珍しいチーズをつまみに、ちょっとお高いワインをあけようとごきげんで帰路についていた。
玄関の扉を開けた時の違和感。
忘れるわけがない、この独特の煙草の香り。
足元には丁寧に揃えられた革靴が一足。明らかに男物と分かるそれは、言わずもがな私の所有物ではない。
戸惑いながらもリビングへ歩を進めると、ソファには見覚えのある後ろ姿があった。
「遅かったな」
そう言いながら振り向いたのは間違いなくジンだった。