第18章 人助け2/ジン
(人助け2)
玄関のドアを開けると血の匂いが鼻についた。
足元を見ると点々とリビングに向かって血痕が落ちている。
慌てて靴を脱ぎ捨ててリビングへと走った。
「邪魔…してるぜ。」
思った通り、部屋にいたのはジンで。
勝手に洗面所から持ち出したのだろう、脇腹を押さえているタオルは真っ赤に染まっている。割と気に入ってたタオルだ、というのはこの際無視しよう。
手に持っていた鞄や買い物袋はその場に投げ捨ててソファへ駆け寄った。
「とりあえず上着、脱げる?」
私の問いかけにジンは無言でごろんと仰向けに寝転がった。傷口を押さえていない右手を投げ出した様子を見ると、脱がせてくれと言うことなのだろう。
ゆっくりとコートに手をかけると、ジンは小さく呻いて顔を顰めた。
「…このコートって高い、よね?」
この状況で聞くことか?とでも言いたげな視線が刺さる。
その視線を無視して、ペン立てからハサミを抜き取った。
「ごめん、これ切るね。後で弁償するから。」
シャキンシャキンと歯を合わせていく。
衣服を取り除くと何かで抉られたような傷口が見えた。
これは研修医として田舎の病院にいた時に見たことがある。
「…ライフル?」
猟銃で誤って撃たれたと緊急搬送されて来た猟師さんのそれと酷似していた。
まさかジンが野生動物と間違って撃たれるようなヘマはしないだろうから、猟銃と銃創が似ているライフルだろうと見当をつけた。
僅かにジンの頭が上下する。当たり、ということなのだろう。