第17章 勘違い事件簿/安室
結論から言うと、ストーカーなどはいなかった。
「母さん!なんでここにいんだよ!?」
「あなたに言ってなかったかしら?母さんね、この近くのジムに通ってるのよ。ヨガのレッスンが毎週水曜日だから、帰りに掃除しに来てあげてたでしょ?」
「ひょっとして冷蔵庫の惣菜も…。」
「冷蔵庫にビールしか入ってなかったから心配になっちゃって!でもこんな素敵な彼女がいるなら安心ね!まったく、それならそうと母さんにも紹介してくれたらよかったのに。」
「いやいや、そういうんじゃないから!こいつはただの同僚!」
鍵が開いていた同僚の家に入ると、彼のお母さんがせっせと部屋の掃除をしている場面に出くわした。
私のことを彼女だと勘違いしたらしく盛大なおもてなしを受けたのだが、それは完全なる誤解である。
休憩時間に入った同僚を半ば無理矢理呼び出し、状況を説明させて今に至る。
「本当にご迷惑おかけしまして。」
「いえいえ、とんでもない。」
彼のお母さんからは深々と頭を下げられた。
今度なんか奢ってよね、と言えば彼は申し訳なさそうに頷いた。
こうして同僚の勘違いから起きたストーカー事件は幕を閉じた。
「ストーカーじゃなくて良かったですね。」
「本当にもう…安室さんとコナンくんも、お騒がせしてすみませんでした。毛利探偵にもよろしくお伝えください。」
2人とは探偵事務所の手前の交差点で別れた。
去り際の安室さんの顔が意味深な笑みを浮かべていたことは忘れることにしよう。
さて、何をご馳走してもらおうか考えないと。