第18章 人助け2/ジン
「病院じゃないんでこの程度が限界。あとは抗生剤飲んで寝て下さい。」
痛ぇだの、もっと丁寧に扱えだの文句を言われながらもなんとか寝室のベッドへ運ぶ。
「とりあえずお水持って来るけど、何か食べれそう?食べたいものある?」
キッチンへ行こうと立ち上がると服の裾が引っ張られる感覚があって、再びベッドサイドに腰を下ろすことになった。
「どうかした?」
「…ここにいろ。」
動けなくなるほどの怪我をしていてもあの眼差しは健在で、俺が寝るまでそこから動くな、と射竦められる。
「甘えてるんだか脅迫してるんだか分かんないよこれじゃ。」
「甘えてるわけじゃねえ。」
「はいはい。ゆっくり寝て下さいねー。」
肩口まで毛布をかけてやる。ぽんぽんと軽く胸の上を叩くと本棚に手を伸ばして未読の小説を抜き取った。
「なあ、」
表紙を開いたところで声が掛かる。
「お前、バーボンと仲がいいらしいな。」
「そう?偶然関わることが多いだけじゃない?」
バーボン、つまりは安室さんとのことか。
彼と個人的に会ったのはあの日食事に行った一度きりだ。特段仲がいいとは言えないと思うのだが…。
「だからと言ってどうこう言うつもりはねえがな。」
「ちょっと話の意図が読めないんですけど。」
「何でもねえよ。」
ふい、と体ごと逆を向かれてしまった。
小さく溜息を吐く。もういい、気にしたら負けだ。薬の副作用で朦朧としてるんだと思うことにする。
再び手の中の小説の表紙を開いた。