第17章 勘違い事件簿/安室
(勘違い事件簿)
「はあ?ストーカー!?」
病院の廊下に大声が響く。
あわてて口に手を当てるがもう遅かった。
廊下を歩く人達が不思議そうな顔でこちらを振り向く。
すみません、と2人で頭を下げた。
「さくら声でけーよ…。」
「いやだってアンタがストーカー?する方じゃなくて?」
失礼な、と強面の同期は頭を掻いて溜息をついた。
「面と向かって来るなら対処のしようもあるんだけどさ…。さくらほら、毛利探偵と知り合いって言ってたじゃん?聞いてみてもらえないかなあ?」
「心当たりはないの?」
「昔振った女とか?」
「最低男め…とりあえず聞くだけ聞いてみるわ…そんなに親しいわけじゃないから期待はしないでね?」
そう言うと同期は礼を言って仕事に戻っていった。
彼によると、どうやら1カ月程前からストーカー被害に遭っているらしい。
家に帰ると部屋の物の位置が微妙に変わっていたり、ポストの中身が机の上に置いてあったり、冷蔵庫に作った覚えのない惣菜が入っていたり…
とにかく気持ち悪いので警察に行こうか悩んでいたところ、私が毛利探偵と知り合いだということを思い出したらしい。
そこまで仲良くないんだと主張したものの取り合ってはもらえず、しかし約束してしまった手前反故にするわけにもいかない。
蘭ちゃん経由なら相談に乗ってもらえるだろうか。
電話帳から蘭ちゃんの名前を探して発信ボタンを押した。