第16章 報告はディナーの後で/安室
待ち合わせた駅に白いスポーツカーで乗りつけて自然な動作で助手席のドアを開けてエスコートしてくれたり、今このお店でも腰掛ける時に椅子を引いてくれたり。
安室さんの一挙一動全てが紳士的で思わず見惚れてしまう。
顔に何か付いていますか?と首を傾げる姿さえ様になっていて、正直に言うと店内にいる女性達からの視線が痛かった。
「飲み物何かいかがですか?ここはカクテルもおすすめなんですよ。」
渡されたドリンクメニューに目を通す。安室さんがおすすめというだけあって、フレンチレストランだというのにカクテルの種類が豊富だった。
「そうですね…じゃあマティーニいただこうかな。」
「もしかしてお酒は結構いける方ですか?」
「んー弱くはないけど、って感じですかね。好きなんですけど割とすぐ眠くなっちゃって。」
「あはは、分かります。僕もそんな感じですよ。」
運ばれてきたグラスを軽く掲げて口をつけた。確かに、バーで出てくるものと遜色がない。
「さくらさんはお医者さんだそうですね。大変じゃないですか?」
「大変ですけど、子供の頃からの夢だったんですよね。小さい頃大怪我をしたときに助けてくれた外科の先生に憧れてて。」
「そうなんですか!そういえば僕もお医者さんに憧れたことあったなぁ、よくお世話になってた方が女医さんで…。」
話してみると安室さんは中々に話しやすい人だった。私立探偵なんです、と言っていたのできっと様々な分野の知識があるのだろう。
どんな話題でもウィットに富んだ返答ができるのは素直に凄いと思った。