第14章 お祭り/ベルモット
「でもすごいよく出来てますね、ベル…じゃなくて鈴本さん。」
有名人でいうとサッカー選手の庇護さんが好きかな、と言うとベルモットは洗面所に篭ってしばらく出てこなかった。
好きな有名人が思いつかなくてたまたまCMに出ていた彼の名前を言ったのは内緒だ。
しかし1時間後に洗面所から出てきたのは庇護さんに爽やかさをプラスしたような青年で、思わずどちら様ですか?と言ってしまった私を誰が責められようか。
ベルモットが変装が得意だなんて知らなかったもの。
ちなみに「鈴本」はベルモット、という呼び名が日本人の男性には相応しくないということで私が付けた。
ベル=鈴、という安直なものではあるが。
「あ、御神酒配ってるみたいですよ。折角だから貰いに行きません?」
「いいね、行こうか。」
混雑した人波の中ですっと右手が握られる。
あまりにスマートなその仕草に、中身がベルモットだということを忘れてときめいた。
「さくらさん?」
屋台の間をふらふらと歩いていると声を掛けられた。
「コナン君!その後ろは…お友達?」
「うん!少年探偵団のみんなと来てたんだ!」
コナン君の隣には3人の子供達。初めまして、と自己紹介をする。
「あれ、今日は灰原さんは一緒じゃないのね?」
「哀ちゃんは飲み物買いに行ってるよ!」
カチューシャをつけた女の子が自動販売機を指差した。
見ると両腕に3本のペットボトルを抱えた彼女。
灰原さんは私に気付くと小さく頭を下げた。
そして私の横に立つベルモット…もとい鈴本さんを見ると驚いたような顔で固まった。手に持ったペットボトルがバラバラと音を立てて地面に落ちる。
小柄な方の男の子が慌てて拾い集めていた。