第13章 テニスコートの出会い/安室
「じゃあ、サーブはさくらさんからどうぞ。レディーファーストということで。」
「あ、それはどうも…」
安室さん、ジュニアチャンピオンだったんでしょ?さくら先輩と試合したらいい勝負になると思うんだけど!という園子ちゃんの提案に、私の後輩がノリノリで乗っかり安室さん対私の3セットマッチがセッティングされてしまった。
当の本人達の意志はまるっと無視されて。
「まともに試合するの本当に久しぶりなんで、手加減してください、ね!」
数回のラリーの後、肩ならしのつもりで打ったスマッシュはコートのラインギリギリに入った。ワッとギャラリーが沸く。
「僕の方が手加減して欲しいくらいですけど!」
しかしスムーズに点が取れたのはその1球だけで、その後は気の抜けないラリーが続く。
お互いに派手な技は出さないものの、ミスのないプレーが続く。
「すご、どっちも全然球落とさない…」
1ポイント取るのにも数分かかる始末で、途切れないラリーにどんどん人が集まってくる。
気付くと、周りのコートは皆打ち合いを止めていた。
「なになに、プロがやってんの?」
「いや、両方一般人らしいよ。」
「マジ!?レベル高っ…」
お互いに一歩も譲らず、2セットずつを取ったところで異変は起きた。
安室さんが打ったスマッシュを返そうとラケットを伸ばす。
しかし球が当たる瞬間、違和感があってラケットが弾け飛んだ。
驚いてラケットを握っていた右手を見つめる。
「大丈夫ですか!?」
「先輩!?どうしたんすか?」
ネットの向こうから安室さんが、ギャラリーからは後輩が駆け寄ってくる。