第13章 テニスコートの出会い/安室
「え、園子ちゃん?」
その茶髪の子には見覚えがあった。私が先生に頼まれてたまにOGとして顔を出している母校のテニス部員の1人だ。
「さくら先輩!?」
「園子、さくらさんのこと知ってるの?」
「知ってるも何も、帝丹高校女子テニス部の伝説なのよさくら先輩は!1年生で入部するとすぐに練習試合で3年生にも、男子テニス部にも勝ち、満を持して2年生の時にインターハイに出場するとあれよあれよと決勝まで勝ち上がったものの怪我で決勝は棄権。来年こそ優勝の期待がかかったが、3年生になると勉強に集中するという理由であっさり引退。2年の時の怪我さえなければインターハイで優勝を飾っていたはずなのよ!」
園子ちゃんはそう、一気にまくし立てた。
私も蘭ちゃんもその勢いに圧倒されてしまう。
「へーやっぱり先輩めっちゃテニス出来るんじゃないっすか!」
いつからいたのか、私をここへ連れて来た張本人が背後に立っていた。
「いやだからインターハイなんて10年近く前の話よ?今も指導しに行くって言っても部員達とお喋りしに行ってるようなもんだし…ねえ?」
助けを求めるように園子ちゃんを見るが、彼女は私の味方をするつもりはないらしい。あのさくら先輩の試合が見れるなんて!と聞く耳を持たない。
「園子さん、蘭さんいましたか?」
そこへ金髪の青年が近づいて来る。安室さん、と園子ちゃんが呼んだところを見ると彼女達の連れなのだろう。
「あ!私、いいこと思いついちゃったー♡」
園子ちゃんは彼と私の顔を交互に見るとにっこりと笑った。