第12章 新事実/ジン
(新事実)
コナンと昴さんと別れ、自宅の玄関の扉に手をかけると、鍵が開いていた。
またジンかな、あれほど来るときは事前に連絡して欲しいと言っているのに。
一言文句を言ってやろうとリビングに入った。
「おかえりなさい。お邪魔してやした。」
「あれ、ウォッカだったんですね。」
「アニキは外せない用が入ったとかで…あ、これもし良かったら食べてください。さくらさんが好きだってアニキに聞きやした。」
ウォッカから手渡された紙袋には有名な洋菓子店のロゴが入っていた。
確かに以前ジンと出かけた際にその店の前を通って、チーズケーキが美味しいよね、と言った覚えがある。
しかしまさかそんな些細なことを覚えていてもらえるとは思わずつい頬が緩む。
「ありがとうございます。折角だからウォッカも一緒に食べませんか?お茶入れますよ。」
「すいやせん、あっしは甘い物得意じゃなくて…」
申し訳なさそうに肩をすくめるウォッカに、じゃあお茶だけでも、と冷蔵庫から麦茶を取り出した。
「これ、アニキから預かった書類で、APTX4869の詳細な資料らしいです。このUSBメモリにも情報が入ってるらしいんですが、あっしは詳しく知らなくて…。そのファイルを開くのにパスワードが必要になるんですが、後でアニキが電話で伝えるって言ってやした。」
分厚い茶封筒と1つのフラッシュメモリを渡された。
茶封筒から紙の束を取り出してパラパラと捲る。すると、ポトリと紙の間からIDカードが滑り落ちた。