第11章 小さな友人/コナン
(小さな友人)
放課後、コナンと灰原は揃って書店へ立ち寄った。
元太、光彦、歩美の3人はそれぞれ用事があるとかで真直ぐ帰宅するらしい。
書店の入口を入ってすぐの新刊コーナーで2人とも足を止めた。
「ああ、今月の特集比護さんなんだ。」
灰原が月刊サッカーを手に取ったのを不思議そうに眺めたコナンは、その表紙を見て納得したように呟いた。
「今シーズン活躍してるもんな、ビッグも調子いいみてーだし。」
「当然じゃない。今年はビッグが優勝するわよ。…で、あなたは何を買う予定なの?」
雑誌を大事そうに抱えなおした灰原は、コナンの手に何も無いことに気がついた。彼は何度か棚を行ったり来たりして、まだ目当てを見つけられていないようだった。
「いや、今日発売のはずなんだけど…あった!これこれ。よかった最後の一冊!」
コナンが棚に手を伸ばしたと同時に、右側からも手が伸びてきた。
「「あ」」
お互いに顔を見合わせる。それが見知った顔であると気付くと、どちらからともなく吹き出した。
「コナンくんもこの本?」
随分と難しい本読むんだね、とさくらは手を伸ばして棚から本を抜き取った。
それはイギリスで発売されたミステリーの和訳版で、現地ではコナン・ドイルの再来!と話題になっているものだった。
「あ、うん、そうなんだけど…」
コナンにとってはできることならば譲りたくは無い。他の書店でも品薄であろうことは分かっているからだ。
するとさくらはコナンにそれを差し出した。ずっしりとしたハードカバーの重みが伝わってくる。
「じゃあどうぞ。英語版で読んだからストーリーは知ってるんだ。再入荷されたら買うことにするよ。」
「あ、ありがとう…さくらさんもミステリー読むんだね。」
「そうね…本は何でも読むけど、小説だと特にミステリーとかサスペンスものが好きかな。」