第10章 ワトソンにはなれない/コナン
「あの、それは違うと思います。」
思わず口を挟んでしまった。
「もし毒を経口摂取したのであれば、症状が出るまでに数時間から早くても数十分はかかります。飲み物は5分ほど前に配られたばかりでしたので、それに毒が入っていたとしてもまだ生きているはずです。つまり、事前に何らかの形で毒を口にしてから搭乗したか、即効性のある静脈注射で毒を体内に入れられたかのどちらかでしょう。」
コナンくんを含めた5人が驚いた顔をしていた。
「ええっと、君はさっきの…」
「私、医師をやってます山門 さくらと申します。余計な口を挟んで申し訳ありません。実は被害者の斜め前の席に座っていまして…」
「そうなのかね!いやあお医者さんがいてくれたとは心強い!何か気づいたことがあれば教えていただけませんか。」
医師である、と名乗ると目暮警部と呼ばれていた男性によって再度被害者の近くへ誘導された。
彼に断りを入れて遺体を触らせてもらう。
「そうですね…倒れた時に四肢の痙攣が見られたので使われた毒は神経毒でしょう。痙攣が始まってから死に至るまでの時間が短かったことから恐らく高濃度の薬液を静脈注射されたことによるものと思いますが、機内へはインスリン自己注射等の特別な場合を除き持ち込めないはずですから…」
「あれれー?このおじさん、指先に怪我してるみたいだよ?」
どこかに注射痕が無いかと探しているとコナンくんが指先についた小さな切り傷を見つけてくれた。コナンくんは直後に毛利探偵に怒られていたようだが。
針で引っかいたような傷口だが、よく見ると周囲に少し炎症が起きていることから毒の侵入経路はここで間違い無いだろう。