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[名探偵コナン]マティーニにお砂糖を

第10章 ワトソンにはなれない/コナン


(ワトソンにはなれない)

目の前で人が死んだ。
病院での出来事ではなく、たまたま乗り合わせた飛行機の中だった。
無事に離陸し、安全ベルトの装着が任意になったところで事件は起きた。
読書をしようと鞄から本を取り出したところで、後ろの方から呻き声が聞こえた。
振り返ると、通路を挟んで斜め後ろの席の男性が大きく体を痙攣させて倒れこむところだった。

あちらこちらから悲鳴が上がる。
連休前ということもあり、ほぼ満席だった飛行機内はパニックに陥った。

「お医者さん!どなたかいらっしゃいませんか!?」

近くにいたCAが叫ぶように声を上げる。
すぐに男性の元へ駆け寄ったが、何かの中毒症状を起こしたらしい。しかし解毒剤はおろか医療器具も何もないこの状況ではどうすることもできず、数分後に彼は息を引き取った。



「皆さん落ち着いて下さい。」

前方の席の男性が立ち上がった。やや恰幅の良いその男性は警察です、と名乗った。後から若い男女も胸ポケットから手帳を出してそれに続く。

その警察の3人がこちらへ来るよりも先に眼鏡をかけた少年が駆け寄ってきた。
この少年…どこかで見た覚えがある。どこだったか、割と最近だったと思うのだが…

「コナンくん!…ということはまさかあの男も…」
「はい!警部殿、毛利小五郎ここにおります!」
「この厄病神め…」

コナン、とその少年の名を聞いて思い出した。この間怪盗キッドが現れた時に”キッドキラー”と新聞で取り上げられていた少年だ。
警察と顔見知りである様子にも納得がいった。
コナンくんと一緒に居合わせた毛利探偵と刑事さん達が亡くなった男性の周りを調べている。
私を含めた周囲の乗客達は女性の刑事とCAの案内によって、わずかに空いていた席へと案内される。
被害者のそばには知人らしい数人が残っていた。

「どうやら何かの毒物を口にしたようですね。」
「口にするものといえば…先ほどの機内サービスで出された飲み物くらいか。」

去り際に聞こえた会話によると、彼らは毒が被害者のコーヒーに入っていたと推測したらしい。
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