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[名探偵コナン]マティーニにお砂糖を

第9章 マジックの裏側/キッド


「この腕じゃ飛んで帰れそうにねーし…あ、その前にハングライダー壊れちまったか…」

どうやってここから帰ろう、と頭を捻る彼に私の服貸してあげようか?と提案した。

「キッドって確か変装が上手いのよね?女物の服貸してあげるから、適当な女性に変装して出て行ったら?」
「マジ!?いいんすか!?サンキュー!オネーサン本当いい人だな!」

現金なほど顔を輝かせた彼に思わず笑みが漏れた。




「これなんかどう?」

クローゼットからゆったりとしたワンピースを出す。体型を隠すにはオーバーサイズの方が都合がいいはずだ。もしかしてキッドならば関係ないのかもしれないが。

「ありがとうございます。ちょっと洗面所借りてもいいですか?」

洗面所へ向かう彼の背中を見送る。
テレビではキッドの歴史と題して過去のキッドの事件を振り返っていた。

『キッドが世にその名を知らしめたのは18年前のパリが最初と言われています。彼にこれまで狙われた宝石の多くは所謂”ビッグジュエル”であり、』

18年前?テレビから聞こえてきた声に首を捻った。先ほどそこにいた彼はそれこそ18くらいに見えた。いや、変装の得意なキッドのことだ。先ほどの姿も変装である可能性はもちろんあるのだが。



洗面所のドアが開く音がして、彼が姿を現した。
そこに居たのは背格好まで私にそっくりな女性で。信じられない、と目を擦った。

「すごいね、鏡見てるみたい。」
「まあ、ね。あんまり長居するのもなんだから、もうお暇するわね。」

声まで自分そっくりのものが聞こえてきて、少々気持ちが悪い。
玄関へと向かう彼を追いかけて、ミュールを手渡した。

「小さいかもしれないけどその革靴よりはましでしょ?あとその服、もう着る予定ないから処分してもらっても構わないわ。」

玄関ドアを出た彼は、後ろ手に手を振って去って行った。
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