第1章 人助けのつもりが/ジン
左腕がひどく痛む。
未だ朦朧とする意識の中でぼんやりと目を開けてみると、見慣れない天井が映った。
身体を起こそうとするが力が入らない。
ここはどこだ?
FBIとの抗争で何発か銃弾をくらった所までは覚えているが、廃ビルに入り込んでからの記憶がまるでない。
仕方なく目だけを動かして周りを観察するが、どうやらマンションの一室のようだ。ただし自分の知っている部屋ではない。
唯一動く右手で身体を確かめる。
撃たれたところには丁寧に包帯が巻いてあった。少なくとも助けてくれた人は敵ではないということか。
少し血を流しすぎたな。
身体が言うことをきかなくてはどうしようもない。もうひと眠りして回復を図ろうかと小さく溜息を吐いた。
どの位眠っていただろうか。
先ほどは陽が射していた窓には遮光カーテンがひかれており、とっくに日が暮れたことを告げていた。
痛む傷口を庇いながら上体を起こしてみる。
昼間よりはスムーズに起き上がれたことに安堵する。
肩からシーツが滑り落ちて初めて、自分が何も身につけていないことに気づいた。
ベッドサイドのテーブルには畳まれた服が一式、ご丁寧に下着まで用意してあった。着ろ、ということだろう。
明かりが点いている方からテレビの声が聞こえている。
さて、この俺を助けるなんて奇特な奴の顔を拝みに行こうか。