第8章 ヘッドハンティング/黒の組織
「これからよろしくね、ギムレット」
通信が切れた後、ベルモットがこちらへ手を差し出してくる。
その右手を握り返す際、今度こそギムレットについて聞こうとすると、ジンの声が聞こえてきた。
「おい用事は済んだ、もう行くぞ。」
見ると、既に入り口に向かって歩を進めている。
待って、と慌てて後を追う。
後ろでベルモットが肩をすくめていた。
◻︎
「あっしはウォッカといいます。」
「ウォッカね、よろしくお願いします。」
ホテルからの帰り、ここまで連れて来てくれた男性がふたたびハンドルを握った。
来る時とは違い助手席にはジンが座っている。
「他のメンバーは追々紹介する。それと、これが俺の連絡先だ。」
マンションの下に着いて車から降りると、助手席の窓が開きジンから小さなメモを渡された。
「番号は覚えて、携帯に登録はするな。都度履歴も消せ。あとそのメモは覚えたらすぐに燃やせ。」
そんな無茶な、と抗議しようとするが、口を開きかけたところで既に車は走り始めていた。
小さく溜息を吐いてメモを見つめた。
「11桁の数字の羅列くらいすぐに覚えてやるんだから!」