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[名探偵コナン]マティーニにお砂糖を

第7章 残り香/ジン


ジンの姿がドアの向こうに消えた後、何か大事なことを忘れているような気がした。
何とは無しにテレビを点けると、見たかったドラマのエンドロールだけが静かに流れていた。

「うそでしょ…」

思わず声が漏れる。毎週楽しみにしていて、仕事で見れない時はわざわざ録画予約までしていたのに。最終回はリアルタイムで見れそうだからと録画予約を怠っていた自分を呪った。

「…っジンのせいだ!」
既に姿の無い銀髪の彼へ、聞こえるはずのない文句を叫ばずにはいられなかった。





◻︎





さくらのマンションのエントランスまで降りたところで、ベルモットへ電話をかけた。
ウォッカはあと10分ほどかかるだろうから、時間を潰すにはちょうどいい。
煙草に火をつけて紫煙を吸い込みながら相手が出るのを待った。

『Hi,どうしたの?』
「今日、誰と夕飯を食べた?」
『あら、私のプライベートが気になる?』
「下手な冗談だな。さくらと会ってたんだろう。」
『情報が早いのね。でも彼女は私の友人なだけ。深い意味はないわ。』
「ただの友人をギムレット、と呼ぶのか?」
『だから深い意味はないのよ。彼女と初めて会ったのがバーだったから。それだけ。』

恐らくこれ以上会話を続けたところで、納得のいく回答は永遠に得られないのだろう。誤魔化すのにかけてこの女の右に出る者はいない。
ちょうど遠くから愛車のエンジン音も聞こえてきている。
ザリ、と咥えていた煙草を踵で潰した。

「…今はそういうことにしておいてやる。だがな、あの女に余計な手を出してみろ。どうなるか分かっているな。」
『随分とご執心なのね。妬けちゃうわ。』
「フン。よく言うぜ。」

目の前にポルシェが止まる。
携帯のボタンを押して通話を終了すると、その助手席へ乗り込んだ。




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