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[名探偵コナン]マティーニにお砂糖を

第7章 残り香/ジン


「もう一度聞く。今まで、誰と会っていた?この香水の持ち主は誰だ?」

そのままの体勢で、つまり私の耳元でジンの低い声が響く。
てっきり一緒に食事をしてきた相手は彼氏か、とかそういった類の質問かと思ったのだが、どうもそうではないらしい。

ゆっくりと目を開けてみたがあの鋭い目つきは変わっておらず、その目で睨まれるとつい萎縮してしまって上手く言葉を紡ぐことが出来ない。

「えっと、バーで会った…友達で…女優さんらしくて、名前は忘れたけど、ベルモットって名乗ってて…バイクの後ろに乗せてもらったから香水はその時に移ったのかも…」

”ベルモット”その名が出た瞬間に、明らかにジンの表情が変わった。


「あの女…またちょっかいをかけてきやがって…」

舌打ちとともにジンの体がゆっくりと離れた。

「あの女に何か言われたか?」

未だ鋭いままのジンの視線と動揺で揺れる私の視線とが交差する。

「いや、夕ご飯をご馳走になっただけで何も…それよりジンとベルモットさんて知り合いだったのね、凄い偶然。」

ジンは何か考え込むようなそぶりを見せ、小さく溜息を吐いた。
重くなってしまった空気を明るくしようと何か他の話題を探す。

「そういえば”ジン”も”ベルモット”もお酒の名前だよね、2人は飲み友達とか?」

しかしそれは結果としてジンの眉間の皺をより一層深くしただけで終わった。

「ハン、飲み友達か…そんな可愛らしい関係じゃねえよ。」

ぺこんとジンの握っている缶が音を立てる。そのままグシャリと元の形など見る影もなく握り潰された。

「そういえば私もベルモットさんから”ギムレット”って呼ばれてるみたいなんだけど、最近お酒にちなんだあだ名つけるのが流行ってるとか?」

「さあな。あの女の考えることは分からねえ」

ジンは握りつぶした空き缶をゴミ箱に投げ込むと踵を返して玄関へ向かった。

「あれ、帰るの?お酒飲んだし泊まっていくと思ったけど。」

「ヤボ用を思い出したんでな。迎えを呼んだから飲酒運転はしねえよ。」

そう言い残すとジンはこの部屋を後にした。
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