第45章 再会/H様へ
高校からの帰り道、俺は思わず目を擦った。
通りを挟んだ向かい側、ちょうど停まったタクシーに何気なく視線をやるとその助手席から降りてきた1人の女性。
彼女から渡米すると手紙が来たのが数ヶ月前のこと。
それっきり電話も繋がらず、メールもエラーで返ってきてしまったからもう会えないものだと諦めかけていたのだったが。
大きなスーツケースを抱えて、数人の外国人と和かに会話をしながら彼女は東都大学と書かれた門をくぐって行った。
「おい工藤!?聞いてる?」
突然耳元で叫ばれてびくりと体が跳ねた。
彼女に気を取られていたせいで、隣を歩く中道の声は俺の耳に全く届いていなかった。
「え!?ああ悪い、何だって?」
「だからー明日のサッカーの試合、8時に学校集合だかんな!遅れんなよ!」
「ああ、わーってるよ。ったく、俺もう部員じゃねーんだけどな。」
「そう言うなって、お前が出てくれると勝てるんだもんよー。」
俺が彼女を見ていたことはバレていなかったようだ、とほっと胸をなで下ろす。
通りすがりの女性を見ていたなんてこいつらにバレたら面白おかしく騒ぎ立ててややこしくなることは必至だ。
しかし後ろを歩いていた会沢のニヤついた顔が視界に入った時、とてつもなく嫌な予感がした。
「ちょっとちょっと新一くーん、俺見ちゃったよ?今向こうの通り歩いてたお姉さんのこと目で追ってたでしょ?」
「げ。」
「おーっとマジか?毛利さんという嫁がいるにも関わらず?」
「これは由々しき事態ですねえ。早速毛利さんに報告しなければ。」
「そんなに慌てるとは、余計に怪しいよなあ?」
携帯を取り出す高橋の手を慌てて掴もうとしたが、結託した3人に敵うわけがなく。
知り合いに似てたんだよ、前にすげー世話になった人でさ、と何を言っても取り合ってもらえない。
以前解決した事件の関係者だということにして何とか蘭へ電話をされることは回避したものの、振り返ると彼女の姿はもう見えなくなってしまっている。
「じゃあ鞄置いたら着替えて集合な!」
「お、おう。じゃあ後でな。」
後ろ髪を引かれながらもその場を後にするほかなかった。