第45章 再会/H様へ
(再会)
「え、日本…ですか?」
「そうなんだよ、東都大学病院からこの術式のデモンストレーションを頼まれてね。山門くん、通訳兼助手として同行してくれないかな。」
「でも私、そのオペは専門外ですけど…。」
「大丈夫大丈夫!今回は新しい機材の使い方のデモが中心で、実際に患者がいるわけじゃないから!それに、日程は一週間あるけどオペと私の講演以外は自由にしてていいからさ。久しぶりの友達に会ってきなよ!」
そんな会話をしたのが1ヶ月前。
日頃世話になっている教授の頼みとあっては無下に断るわけにもいかず。
さらに私の案内を当てにした日本の名所巡りまで組み込まれている日程表を見てしまっては、首を縦に振らざるを得なかった。
「いやあ遠いところからようこそいらっしゃいました。長旅でお疲れでしょう、今日はゆっくり休んでください。」
院長と固く握手をする教授をカメラのレンズ越しに見ながら、心の中で溜息を吐いた。
空港に着くなり観光気分の教授に付き合って東都タワーを登ったばかり。
ホテルへのチェックインもまだだから部屋の隅には大きなスーツケースが人数分並んでいた。
「カメラ、代わろうか?顔死んでるよ。」
隣に立つ先輩に耳打ちをされて、慌てて首を振る。
「すみません、ちょっと時差ボケしちゃってるだけで。大丈夫です。」
日本はいいところですね!と満面の笑みの教授に向けて数回シャッターを切って、何度目かになる溜息を吐いた。