第45章 再会/H様へ
大学病院での打ち合わせも無事に終わり、予約していたホテルへチェックインする。
夜には懇親会という名の飲み会が控えているのでゆっくりしている時間はないのだが、一息つきたくて備え付けのインスタントコーヒーにお湯を注いだ。
「ナイッシュー!」
「さっすが、久しぶりでも腕は鈍ってないのな。」
「ったりめーだろ!」
窓の外から少年達の声が聞こえてきて、何気無くカーテンを開ける。
どうやら私達が宿泊するホテルの裏はちょっとした公園になっているようだった。
スケートボードやバスケットボールなど様々なスポーツに興じている姿が見える。
中でもサッカーをしている少年達に目が止まった。
丁度シュートが入ったところらしく、互いにハイタッチをしている。
その中の1人、まさにシュートを決めたらしき少年にどことなく既視感を覚えた。
「次、工藤がキーパーやれよ!」
「やーだね、俺はフォワード専門なの。」
「じゃ次もキーパーは会沢でよろしく。」
「マジかよ、俺にもボール蹴らせろって…。」
工藤と言う名を聞いてハッとする。
そうかコナンくん、私の作った薬を飲んで元の姿に戻ったと安室さんが言っていたっけ。
まさか大人に戻った姿をこの目で見られるとは思っておらず、不意に懐かしさに襲われた。
グラウンドを駆ける彼を目で追う。
ジグザグにドリブルをしてゴール前、ふわりと上がったボールはゴールポストの左上ギリギリを捉えた。
「おーい、そろそろ行くってよ。」
ハイタッチをして喜ぶ彼らをそのままぼんやりと眺めていると、ドアの向こうからノックと共に先輩の声が聞こえて慌てて立ち上がる。
淹れたまま放っておいたコーヒーを一気にあおって鞄を掴むと先輩の後を追いかけた。