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[名探偵コナン]マティーニにお砂糖を

第7章 残り香/ジン


(残り香)

自宅の玄関ドアを開ける。
先程マンションの前でベルモットさんと別れた直後に時計を確認したところ、既に10時をまわっていた。
今日は11時から楽しみにしていたドラマの最終回があるのを思い出し、急いで靴を脱ぎ捨てた。


「遅かったな。」

ドラマのことで頭がいっぱいで玄関に男物の革靴があったことも、リビングの電気が点いていることも気にならなかった。
リビングの扉を開けた瞬間目に飛び込んできた黒いコートの後姿。
最近ジンは気紛れにこの部屋へ来る。連日来たこともあれば、1ヶ月以上音信不通になる時もある。

「ジン…来てたのね。連絡くれれば真っ直ぐ帰ってきたのに。」

パタンと読みかけの小説を閉じて、ジンはこちらへ振り返った。

「どこかへ寄ってきたのか。」
「バーで知り合った友達と夕飯を。その人女優さんらしくてね、凄い美人なんですよー」

冷蔵庫から缶チューハイを取り出す。先刻のお店ではバイクで来たベルモットに気を使ってアルコールを控えていたため、帰宅したら飲もうと決めていたものだ。
ジンにもいるかと問うと、肯定の返事が来たので缶を両手に持ってジンの元へ向かう。

「あ、テレビ点けていい?いままで観てた連続ドラマが最終回で…」

ソファーに座ろうとジンの横を通り過ぎたその時だった。
ガタンと音を立ててジンが立ち上がり、そのままこちらへ向かって歩いてくる。あまりの気迫につい後ずさってしまった。
しかし所詮は1人暮らしのマンション、背中はすぐに部屋の壁に当たる。
ジンが自分の体と壁とで私を挟むように、右手を壁についた。見るとジンの左手はポケットに入ったままで、そういえばジンはポケットに拳銃を入れていたことがあったな、とぼんやり考える。
身長差のせいで見下ろされる形になる。近づいてくるジンの顔とあまりの威圧感にぎゅっと目を瞑った。
さらさらの銀髪が私の頬を撫でて、スン、と耳元でジンが息を吸い込む音が聞こえた。
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