第41章 新たな居場所
(新たな居場所)
「あれ?家の鍵かけてきたっけ?ちょっと待ってて、確認してくる!」
「ッチ、早くしろよ。あいつら待たせてるんだからな。」
「すぐ戻ってくるから絶対そこにいてよね!」
彼が小さく鼻で返事をしたのを確認してマンションの階段を駆け上がった。
シカゴの繁華街からすこし離れたところにあるこのマンションは、比較的治安も良く徒歩圏内にスーパーがあることもあって中々気に入っている。
「よかった、勘違いだったみたい。ちゃんと鍵はかかってたよ。さ、早く行こ!」
手持ち無沙汰そうに手の平でマッチ箱を弄んでいた彼の腕を取って車へ向かう。
この街には様々な人達が集まっていて、国籍も肌の色も問われない。
日本では目立っていた彼の髪も、ここでは気に止める人など誰もいない。
注目を浴びたくない私達にとってそれは何よりの利点だった。
「ごめんね、お待たせ!」
カフェのテラス席に座る1組の男女を見つけて手を振った。
片手を挙げて応えてくれた彼らの正面に腰を下ろす。
「久しぶりね。どう?こっちでの生活は慣れた?」
「それなりにね。まだ右側通行とあのビッグサイズな食べ物には慣れないけど。」
少しだけ肩をすくめるような仕草をすると、彼女はクスリと笑ってコーヒーを口に運んだ。