第40章 いつか、また
「あれー?昴お兄さんの家、誰か引っ越してくるのかな?」
「本当ですね。工藤さんが帰ってきたんでしょうか。」
窓の方からそんな声が聞こえてきて振り返った。
窓辺へ駆け寄ると、確かに大型のトラックから運び出された段ボール箱が工藤家の玄関に山と積まれている。
「昴さんからそんな話は聞いてねぇんだけどな…。」
父さんも何も言ってなかったし、と首を傾げる。
そもそも昴さんこと赤井さんはもうじきアメリカに戻るはずだ。荷物を運び出すことこそあれ、新たに運び入れるようなことはないはずなのだが。
「あの荷物、さくらさんのみたいよ。」
「え?」
ひらひらと手紙を振りながら近づいてきた灰原に、ちゃんと最後まで読みなさいよね、と手渡された手紙の3枚目。
“そうそう、引っ越すにあたってとても本までは持って行けなかったので、工藤くんの家で預かっててもらえないかな?洋書のミステリーも沢山あるから、きっと気に入る本があると思うよ。”
「マジ!?」
思わず小さくガッツポーズをすると、隣から聞こえる溜息。
「ほら行ってあげたら?彼、何も聞いてないんじゃない?困ってるわよ。」
窓の外では玄関先に溢れる段ボールに囲まれてあたふたしている昴さんの姿が見て取れた。
「俺たちも手伝いに行ってやろうぜ!あの荷物、昴の兄ちゃんだけじゃ運ぶの大変だよな!」
元太のその言葉を皮切りに、3人は我先にと玄関に向かって走り出す。
「オメーも行くだろ?」
「そうね。彼らとこんなことが出来るのもあと何回も無いでしょうし。」
昴さんの名を呼びながら道路に飛び出していこうとする彼らを慌てて追いかけた。
“また会う日まで、元気でね。”