第40章 いつか、また
“こんな形での連絡になってしまってごめんなさい。”
手紙はそんな書き出しから始まっていた。
“引っ越すことにしました。実は前々からシカゴの大学に誘われててね。今回の事で職場にも居づらくなっちゃったし、いい機会だと思って心機一転、アメリカに行って来ます!”
「マジかよ!?」
「さくらさん、アメリカに行っちゃうのー?」
「寂しくなりますね。」
博士の家で手紙の封を開けたことを後悔した。
あっちへ行け、と背後から俺の手元を覗き込んでいる3人を追い払う。
トイレででも1人でゆっくり読もうかと腰を浮かしかけたところで、封筒の中からコロンと何かが転がり落ちた。
拾い上げると小さなカプセルが2つ、ビニール袋に入れられている。
慌てて2枚目の手紙に目を落とす。
“それと、APTX4869の解毒剤が完成したので同封します。コナンくんと哀ちゃんの分で2つだけ。これ以上この薬が世に出回らないように、残りの薬とその資料は全部私の手で処分しました。くれぐれもこの解毒剤からまたAPTX4869を作り出すようなことはしないでね。ちなみに、解毒剤の予備はないから扱いは慎重にね。”
「ふうん、意外と普通なのね。」
俺の手からその袋を奪うと灰原はカプセルを取り出し、指でつまんで光にかざしている。
「お、おい、気を付けろよ!」
あまりにも無造作に扱うものだから、見ているこっちがハラハラしてくる。