第39章 それから
車は右折レーンには入らずにそのまま真っ直ぐ進んでいく。
あれ、と安室さんの方を向くと、一呼吸おいてゆっくりと彼は口を開いた。
「あの方の正体、知りたいですか?」
少し考えて首を横に振った。
今更知ったところで、どうにもならない。
もっとも、知っていたとしてどうするつもりもないのだが。
「知らないままにしときます。」
組織に興味があったわけじゃないですし、と続けると、真横に結ばれたままだった安室さんの口元が少し緩んだ。
「そう言うと思いました。良かったです、僕の判断が間違ってなくて。」
「ひょっとして私、カマをかけられました?」
「すみません、万が一ということもあったので。…でもこれで大手を振って太陽の下に送り出せます。」
私がこうも簡単に釈放されたのが不思議でならなかったのだが、これで全てに合点がいった。
安室さんが手を回してくれて無罪放免となったのだろう。
ずっと疑問だったんですけど、と今度は私が安室さんに問いかけた。
「ホテルの屋上の時といい、なぜここまで私を庇ってくれるんですか?」
安室さんには私を庇うデメリットこそあれ、利益になるようなことは何1つないはずなのに。
「コナンくんに頼まれたんです。」
「コナンくんに?」
「ええ、さくらさんは組織内部のことは何も知らないはずだから巻き込まないであげて、とね。実際、僕の目から見てもそうでしたしね。」
コナンくん、そういえば警察にツテがあると言っていたっけ。それが安室さんのことだったのか。