第39章 それから
晴れ晴れとした気持ちで外に出たものの、天気は生憎の雨。
溜息をついて鞄から折りたたみ傘を取り出したところで、後ろから車のクラクションが聞こえた。
「マンションまでお送りしますよ。」
横付けされた白いスポーツカーの窓が開いて、見慣れた金髪が顔を出す。
「安室さん、いえ、降谷さん。お仕事はいいんですか?」
「もう3日も書類と睨めっこなんです、休憩する口実を作らせて下さいよ。」
その笑顔に僅かに疲労の色が見えて、苦笑しながらも助手席に滑り込んだ。
私がシートベルトを締めたのを合図に車は動き出す。
少しの沈黙。
「「あの、」」
赤信号で停まったところで、ほぼ同時に口を開いた。
「「あ、すみません、どうぞ。」」
再び声が重なって、どちらからともなく吹き出した。
「なんだかこうして話すのは久しぶりですね。」
「警察では気軽に話しかけられる感じじゃなかったじゃないですか。警視さんが重要参考人と仲良くしてたら犯罪組織との癒着を疑われますよ?」
「確かに。」
再び顔を見合わせて笑い合う。
それからたわいもない話をした。
最近話題の芸能人のこと、面白かった小説、旅行で行ってみたい場所など。
次の信号を右に曲がったら私のマンションが見える。
この短いドライブももうすぐ終り、のはずだったのだが。